木村聡『赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねて』


遊郭を研究する上での参考図書をご紹介します。
木村聡著『赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねて』です。

木村氏の赤線跡シリーズの記念すべき第1作。こちらの著作をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
古本屋さんでも割に見かけることができます。

新書版と文庫版の違いは?

ご存知の方も多いかもしれませんが、同著には、自由国民社版(1998年)と筑摩書房ちくま文庫版(2002年)があります。
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ちくま文庫版は後発なので、純粋な文庫廉価版と認識されがちですが、内容の違いは少なくありません。
両著の違いは何でしょうか?

ちくま文庫のあとがきに添えられた木村聡氏の言葉を借りれば

(元版に)使用できなかった写真を一部加え、モノクロ扱いだったものをカラー化(中略)、元版がガイドブックの体裁だったのに対し、(中略)写真集的な色合いが濃くなった

とのこと。

というわけで、以下が情報としては変更・追加されたことになります。

  • 新版の写真追加
  • カラー写真増
  • じゃあ、ちくま文庫版買えばいいよね?となりそうですが、そうもいきません。

    自由国民社版の京都府橋本遊郭には、画家・大倉ひとみ氏が撮影した貴重な写真が収められています。これらの写真は木村氏が訪れる約10年ほど前に撮影されたものらしく、木村氏が訪問時には既に無くなっていたとのこと。

    許諾関係が消滅したのか、どんな経緯があったのかは不明ですが、ちくま文庫版には大倉氏の写真が収められていません。(ちくま文庫版でも木村氏はこのことに触れていません)
    この2冊でおよそ1980年代半ば~1990年代半ばの橋本遊郭跡の変遷を追うことができます。その価値自体が大きい2つの著作です。

    自由国民社版と筑摩書房ちくま文庫版、どちらを買えばいいかと問われれば、両方!と答えざるを得ません。

    (話は逸れますが)前から気になっていたのですが、同著『赤線跡を歩く』への紹介、或いは認識として、「(木村氏の想いとして)その類の場所には隠れるように見に行かなければならない」といったものを散見します。

    しかしながら、上記の通り、木村氏本人が明確に、同著はガイドブックの体裁である、と述べています。
    ガイドブックとはつまり、街へ誘うための本です。

    もちろん、冷やかしで訪問することは避けるべきですが、それはどの街も同じ。上記、木村氏の想い云々とは別にしても、遊郭部としては過度に遊郭・赤線跡を神聖視に近い敬遠さで遠巻きに眺める必要は無いと思っています。他の街同様、その街に暮らす人とニュートラルな気持ちで接したい。個々にそれぞれの街への接し方はありますが、「同著はガイドブックであること」という事実と、ともあれ左記が遊郭部の認識です。

    見所

    見所は上記、橋本遊郭の貴重な写真の他、下記の通り。

    同著は1作目のため、当然のことながら、発行当時、続編が作られるか不明であったと思われます。そのせいか、掲載された地域は東京近郊、関東、関西とある意味、有名どころオールスター構成となっています。ほとんどが関東圏の情報で占められているので、関東県内の方であれば入門にうってつけかもしれません。

    また、関東および関西の地域だけに街の開発サイクルも速く、同著の掲載場所を今も見ることは確実に困難になりつつあります。たとえば洲崎の代表的な物件は2011年で全て壊滅しました。いわずもがな遊郭歩きは時間との勝負。手にとって気になる場所があれば、迷う時間を惜しんで、実際に訪れてみることをオススメします。

    既に建て替え、更地化されていたときの哀しさたるや…。反面、残っていたときは、その建物に愛おしささえ感じます。この感覚が遊郭歩きに伴う愉しさの一つとして挙げても決して否定されないのではないでしょうか。

    特集ページ

  • [赤線紀行]銚子を訪ねて
  • 赤線を知る映画ガイド(藤木TDC)
  • 銚子田中町遊郭跡は今も現役の歓楽街ですが、そのことには触れられていません。

    掲載地

    • 東京
      • 吉原
      • 洲崎
      • 品川
      • 千住
      • 新宿
      • 亀戸
      • 新小岩
      • 東京パレス
      • 立石
      • 亀有
      • 鳩の街
      • 玉の井
      • 武蔵新田
      • 調布
      • 八王子
      • 立川
    • 関東
      • 松戸
      • 船橋
      • 川崎
      • 横浜(曙町、真金町、永楽町、チャブ屋)
      • 横須賀(安浦、皆ヶ作)
      • 小田原
      • 大宮
      • 熊谷
      • 水戸
      • 玉川村
      • 土浦
      • 宇都宮
      • 古河
      • 川越
    • 関西
      • 飛田
      • 中書島
      • 橋本
      • 平方
      • 大和郡山
      • 名古屋中村

    「木村聡『赤線跡を歩く 消えゆく夢の街を訪ねて』」への2件のフィードバック

    1. 大倉ひとみです。
      この記事は今日初めて読みました。
      貴サイト等は検索でよく出てくるので拝見しておりました。
      橋本の件は、またお目にかかれた折にでも。

      今年5月に京都、9月に東京で展示をします。
      すべてカフェー建築を描いた作品ですので
      よろしければ是非どうぞお運び下さい。
      詳細はブログの方でご高覧下さい。

      1. 大倉さん。
        コメントお寄せくださりありがとうございます。
        弊記事にある通り、大倉さんのお写真、イラストは木村さんの著作を通じて拝見しておりました。
        その大倉さんからのコメントいただけるとは嬉しく、また大変驚いています。

        個展、是非伺わせて下さい。また、橋本の件も是非。

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