【廓メシ No.11】鮨処:「双子鮨」で握り(並)を召す


遊郭周辺の飲食店をレポートする当企画。11回目の今回は千住柳町にあった「千住遊郭」に隣接した鮨処「双子鮨」をご紹介します。

外観。かなりオツであります。千住遊郭を探索した人なら必ず目に焼け付けたこの姿…。
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看板もいい塩梅に歪んでおります。
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位置関係はこちら。千住遊郭の外郭に位置します。
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押し穴子1P:550円
ちらし弁当:500円

とな。腹痛が不安で仕方がないですが、冬場であることに賭けましょう…。

では入りましょう。

ガラガラガラ…。
ストーブ。外は寒いので有難いです。

茶を所望す。ずずず…。

お店の中。撮影の許可を頂いたので心置きなく撮影します。

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パシャパシャ。

80歳代の大将と女将さん、息子さんと思われる若大将で経営されているようです。

メニューを写し忘れたので、とっと握り(並)を頼みます。
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1200円なり。高いのか安いのか分かりませんが召します。

もぐもぐ。

双子寿司の握り(並)うめぇ…。

さて、一服付いたところで大将にいろいろお話を伺ってみました。
大将は御歳80歳。いろんなことを教えてくださいました。

大将から聞き取れたことは以下。

  1. 千住大門商店街の通りは、遊郭の裏手口が多く面していた
  2. 大門と裏門があった
  3. 一番賑やかな頃はシナ事変(1937年)の頃だった
  4. その頃、小学5年だった(ということは大将は現在86歳)
  5. 兵隊が明日をも知れない命なので親公認で遊びに来ていた
  6. 大門商店街の通りは幹線道路を作るために妓楼を取り壊した
  7. 瓦を2,3枚開けて柱に紐をくくって30人位で引っ張ると簡単に建物が壊れた
  8. 頑丈そうな建物が簡単に壊れるさまを見て、子供心に不思議だと思った
  9. そうこうしているうちに敗戦になり、幹線道路の件は無くなった
  10. 遊郭に通じる道にカフェー街があった
  11. カフェー街にも私娼がいた
  12. 私娼を抱える店は「ダルマ屋」といった
  13. 市川荘も昔は市川楼という女郎屋(「女郎屋」との言い回し)だった
  14. 売春防止法後(1958年)は、遊郭はキッカリ足を洗って下宿屋になった
  15. 遊郭の旦那衆(=楼主)は農村出身だから、役人に素直だった
  16. 吉原の方はコレ(顔に傷を作る仕草)「だから、今でもそういう場所(風俗街)になってしまった
  17. 「鳩の街」は通称、「鳩」
  18. アノおでん屋さんは大将の弟さん

さて、かなり重要がことが盛り沢山に聴くことができました。
マッピングしてみましょう。番号は聞き取りに対応しています。
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個別に見ていきます。

■千住大門商店街の通りは、遊郭の裏手口が多く面していた

目抜き(メインストリート)は地図上の南北の通りだったので勝手口や娼妓の出入りする入り口が多く面していたのかもしれません。

■大門と裏門があった

大門の存在は知っていましたが、反対側にも門があったとは知りませんでした。「裏門」と仰ってましたが、人の流れ的に大門から出入りするのが一般だったためかもしれません。

■一番賑やかな頃はシナ事変(1937年)の頃だった
■その頃、小学5年だった(ということは大将は現在86歳)

やはり戦勝ムードだったためでしょうか。

■兵隊が明日をも知れない命なので親公認で遊びに来ていた

当時の価値観としては当然あったように思います。

■大門商店街の通りは幹線道路を作るために妓楼を取り壊した
■瓦を2,3枚開けて柱に紐をくくって30人位で引っ張ると簡単に建物が壊れた
■頑丈そうな建物が簡単に壊れるさまを見て、子供心に不思議だと思った
■そうこうしているうちに敗戦になり、幹線道路の件は無くなった

これも初耳。

■遊郭に通じる道にカフェー街があった
■カフェー街にも私娼がいた

これは今回一番のスクープといえるかもしれません。
現在の風景はこちら。
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現在は歓楽的要素は全くありませんが、なんと、この通りにカフェー街があったそうです。

ちなみに以前から気になる場所がありました。こちらです。

地図上ではスナックビルと表記した地点

遊郭とは140mばかり離れているのですが、こじんまりとしたスナックが身を寄せ合うような集合体があります。これが以前から気になって仕方がありませんでした。
遊郭との関連は不明でしたが、今回の聞き取りがヒントになりそうです。
位置関係的にカフェー通りの延長線上であり、どうやら、このスナック集合体はカフェーの成れの果ての可能性が高いと見て良さそうです。

■私娼を抱える店は「ダルマ屋」といった

これも初めて聞く言葉です。訳を問えば、「誰にでも転ぶ女がいたから」だそうです。
なるほど。そんな俗語があったんですね。

■市川荘も昔は市川楼という女郎屋(「女郎屋」との言い回し)だった

ここも以前から気になっていた建築。ただし話の流れ的に、当時の建物ではないようです。
また、土地によって、「女郎屋」「遊郭」「赤線」と言い回しが分かれますね。大将は「女郎屋」派でした。

■売春防止法後(1958年)は、遊郭はキッカリ足を洗って下宿屋になった
■遊郭の旦那衆(=楼主)は農村出身だから、役人に素直だった

一概に「遊郭」とはいいますが、土地土地によって、その性格は全く異なります。遊郭部が聞き取りをする際に必ず聞くようにしているのは、売防法後の身の振り方。

五条楽園や飛田新地のように体裁を取り付けながら、実質的な遊郭システムを継承したところ。千住遊郭のように、きっちり足を洗ったところ。ほとんどの場合、2極化します。

当時は組合が存在し、抜け駆けで営業しようものなら、密告されてもおかしくは無いので、同地域内では足並みが揃う形となったのでしょう。

千住遊郭は素直な楼主が多かったとは大将の弁ですが、宿場町由来の形成ゆえ、その気質もいくらか残っていたのかもしれません。

■吉原の方はコレ(顔に傷を作る仕草)だから、今でもそういう場所(風俗街)になってしまった

顔に傷を作る仕草とはヤクザ屋さんのことですね。

■「鳩の街」は通称、「ハト(鳩)」

話の流れで出てきた鳩の街のことは「ハト(鳩)」と呼んでいました。
鳩の街が戦後に形成されたことも当然ながらご存知でした。さすが。

アノおでん屋さんは大将の弟さん

前から気になっていたおでん屋さん。店舗でもなければ屋台でもありません。行商のおでん屋さんです。
千住遊郭と尋ねると、ちょくちょくお見掛けするのでかなり気になっていた存在。北千住界隈にお住まいであればご存知の方も多いのでは?

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伸びた影がオツであります…

鈴を鳴らしながら、ゆるりゆるりと売り歩く様は一種独特。こちらの件に聞いてみたら、なんと弟さんでした。
ただ、去年から身体を壊して辞めてしまったそうです。なんとも…。
(北千住には、行商のきびだんご屋もあるのでそっちも気になります)

まとめ

今回、かなり有意義な聞き取りができました。大将は耳も敏く、教えてくださることは興味深いことばかり。北千住の地元言葉はあまり聞いたことがなかったのですが、歯切れがいいです。江戸弁なんでしょうか。
双子鮨の大将にはこの場を借りて御礼申し上げます。

ちなみに、肝心のお鮨も美味しかったですよ。

千住遊郭お越しの折は双子鮨をご贔屓に。

「【廓メシ No.11】鮨処:「双子鮨」で握り(並)を召す」への3件のフィードバック

  1. はじめまして。

    一連のツイート、拝読致しました。
    今件で此方の記事にコメントを残すのは妥当ではないかも知れませんが、どうかご容赦の程を・・・。

    当方、InstagramもTwitterもアカウントを持っていない上にアメブロも外部からのコメントを受け付けぬ設定にしているのです。コンタクトの件でお手を煩わせてしまいました。

    当方の鏡橋・・・・・の記事の件だと拝察致します。
    いやはや・・・・当方の無知ゆえに早合点してしまったようでお恥ずかしいです・・・・・。
    件の記事は、削除対応致しますね。

    実は予てより貴サイトを拝読していました。
    毎回思うのですが、その知識と行動力に脱帽しています。

    当方、まだまだ好奇心に毛の生えた程度の見方で遊郭・赤線跡を見ている段階でありまして・・・。今後も貴サイトの更新を楽しみにしております!

    1. 花町太郎様
      こんにちは。コンタクト頂きありがとうございます!とてもうれしいです。

      記事の件、削除だなんてとんでもないです。
      貴サイト、とても参考になる内容で齧るように読んでしまいました。
      住宅地図の検証など思わずにやりとしてしまいました。
      なかなか出掛けることが出来ないため、新潟の風景を見てまた猛烈に新潟の再調査を行いたくなってしまいましたw

      原因は私の作成した不完全な遊郭マップによるものですので、本来は当方が詫びる筋です。
      本当にすみません。重ねてお詫びいたします。

      私もまだまだ分からないことが多くヒヨッコです。
      (その結果が、ご迷惑をおかけしたのだと思います。すみません。)

      新潟へは昨年の夏に取材に出かけ、
      市内では、十四番町、常磐町、山ノ下、そして今回の鏡橋マーケットを回りました。

      その際に、いくらか有用と思われる情報も得ることが出来ました。
      是非、情報交換などさせていただきたく、もし宜しければメールなど頂くことは可能でしょうか?
      遊郭部(アルファベット)@gmail.com
      が私のメアドになります。

      また、後からの報告となってしまい恐縮ですが、私が試験的に運用中の遊郭ニュースでも取り上げさせていただきました。
      今後ともご活躍期待しております!!
      http://yuukaku-news.blogspot.jp/2013/02/blog-post_8.html

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