新潟県同市:鏡橋マーケット1「ここは遊郭か?赤線か?青線か?」


今回は新潟県同市に存在した色街、「鏡橋マーケット」を取り上げます。

まず、色街との用語を用いたのは、鏡橋マーケットが赤線(公娼)なのか、あるいは青線(私娼)なのか明確な根拠がないためです。

鏡橋マーケットについては、渡辺寛『全国女性街ガイド』(1955年、季節堂出版)に以下とあります。同著は木村聡『赤線跡を歩く3』(2007年、自由国民社)に転載されています。『赤線跡を歩く3』から引用します。

赤線がもう一つあり、信濃川左岸と東堀の間の鏡橋マーケット付近のシマで20軒に100名ほどいる。

文中には明確に「赤線」との記載があるのですが、必ずしもこれが赤線の定義である「公娼」であるとは限らないと遊郭部は認識しています。

取材の過程で、全国各地の当時を知る地元の方とお話しした限り、各語の定義は本来の意味とは異なります。

本来の定義と、俗称の定義をまとめてみます。

■本来の定義

  • 遊郭:戦前の公認売春区域。戦後、公娼廃止により遊郭は消滅。以後、赤線へ移行
  • 赤線:戦後の公認売春区域。遊郭から転じた公認売春区域と、遊郭を由来に持たず戦後生まれた公認売春区域の2つを含む
  • 青線:戦後の非公認売春区域。遊郭を由来に持たない

■俗称の定義

  • 遊郭:戦前から続く売春街。戦後、公娼廃止により遊郭は消滅したが俗称としては生きる
  • 赤線:戦後の売春街。遊郭を由来に持たず戦後の混乱から生まれた売春街
  • 青線:赤線に同じ

つまり、俗称の定義には営業許可の概念がなく、

  • 戦前からの売春街→遊郭
  • 戦後生まれた売春街→赤線

という戦前or戦後の違いしかありません。更には営業許可の概念が無いため、定められた区域という意識も低く、売春というニュアンスになります。

本来の定義と、俗称の定義の違いを図示化してみました。
00.png

本来の「赤線」の定義は、警察が風俗営業許可を与えた地域を指すのですが、住民からすれば、店舗側が風俗営業許可を取得しているか否かは知り得ません。せいぜい、店先の鑑札の有無で判別するしかないでしょうが、そもそも遊客が鑑札を気にするはずもありません。まして近所の住民の方であれば、なおさらでしょう。

仮に営業許可を与えずとも警察が無認識、あるいは黙認していれば、事実上の売春街、つまり「赤線」として成立します。『全国女性街ガイド』の著者、渡辺寛氏も風俗営業許可の有無を確認しているとは思えず、結局のところ、俗称の定義に近づきます。

これまでにも赤線の街を取材したり記事化を行いましたが、それらの多くは元々遊郭のあった場所であるため、風俗営業の有無を確認せずとも、遊郭からの移行という経緯が明確であったため、特にウラを取る必要もありませんでした。

今回の鏡橋マーケットは遊郭を成立の由来に持つ街ではないため、上記のようにある程度、赤線 or 青線の違いについて気を配ってみました。

ともあれ、鏡橋マーケットについては便宜上、俗称としての赤線として話を進めます。

新潟市内に存在した遊郭、赤線その他類するいわゆる色街の調査は、

  • 2010年8月5日
  • 2012年7月22日
  • 同7月28日
  • 同8月18日

に行いました。限られた時間内での取材となりましたが、可能な限り、掘り下げを推し進めたいと思います。

「新潟県同市:鏡橋マーケット1「ここは遊郭か?赤線か?青線か?」」への4件のフィードバック

  1. 連続コメント失礼します。

    無茶苦茶興奮する記事です。

    そうなると「山ノ下」も遊郭由来ではない故に「俗称」扱いになりますよね。
    「?」ばかりで恐縮なのですが、「昭和新道」は純粋な「トルコ街」流れでこれらの定義付けとは異なると自分は思うのですが。

    ウェブ上でも、ないしは話を聞いた新潟市民でも「昭和新道」を「赤、青」の由来と言う方がおります。気になります。

  2. 花町太郎さん
    今日は。
    花町さんのすばらしい良記事を拝見して、矢も盾もたまらず書き始めてしまいました。

    私の赤線青線のまとめ表はいささか乱暴だったかと少し後悔しています。
    というのも戦後、赤線として認められた地域は決して売春を認められたわけではないからです。

    風俗営業法に当てはまる店舗として認められたに過ぎず、決して売春を認めたわけではないからです。警察は黙認していたに過ぎません。(この辺りまだ勉強不足なので自信が無いですが)

    つまり、売春を公認していたのは戦前までで、戦後は売春を認めたのではなく、あくまで性的サービスを行う営業を認めたに過ぎず、内部で客と提供側がどのような関係になろうと把握することは難しく、事実上、黙認する形となります。

    ですので、仮に本来の定義で言う「赤線」で売春行為が行われていた場合、厳密にはそれは違法ということになります。結局のところ、売春が禁じられているという点では無許可地域の青線とほぼ同義になってしまうのです。

    というわけで赤線=公認地域、青線=非公認地域というカテゴライズもあまり意味を成さずに、赤青は特に意識しないのが最適解なのではないか…と思い始めています。

    昭和新道の特殊浴場はもちろん営業許可を持っているはずですから、赤由来としか言えません。経緯が青であったとしても、警察が管理するために追認する形で営業許可を与える(申請させる)こともあるので、定義はかなり難しいんですよね…。

  3. 管理人さんこんにちは。ツイッターではお世話になってます。
    花町太郎さん初めまして!ブログ大変興味深く拝見しております。
    (事情がありアメブロで投稿できませんので失礼してこちらで・・・)

    大変興味深い記事でした!
    私はてっきり、遊郭=赤線、遊郭起源ではない=青線だと思ってました。
    新潟の場合、かつては町全体が色街の様相を呈しており、江戸時代から遊郭をまとめよう(封じ込めよう)とする動きがあり、火事が起きるたび統合を重ね、最終的には下町の新潟遊郭のみとなった経緯があります。
    古町の場合は、もちろん遊郭時代もあったのですが、近年まで芸を大事にする花街として生き残ってきました。芸妓は娼婦とイコールではありません。(遊郭と一緒にすると怒られる風潮もあります。)
    そして、鏡橋マーケットは戦後の混乱期に引揚者などが造ったバラック街です。
    山ノ下(秋葉通り)もそうだと思いましたので、これらは花街や遊郭とは異なります。
    沼垂は花街起源ですが、話題のバラック街はその外の出来事なんじゃないかと思います。
    そこに現役の昭和新道や新潟駅周辺が加わるともう何が何やら…

    新潟の場合、公娼・私娼の区別もあり単純な線引きが難しく、カテゴライズも難しいので、いっそ単純に、赤線(=遊郭)は新潟遊郭のみ、その他は青線でいいのではないのかなあと個人的には思います。

    1. 私もまだしっかり把握し切れていないので、現在調査中です。まとめ次第記事化しますね~!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA