インタビュー・現代遊女考
「遊郭が好きすぎて遊郭で働くことにした」(大阪・20歳)


現代の日本には、今もなお遊郭のシステムを継承している街がいくつか存在します。そして、そこで働く女性たちがいます。


(大阪飛田遊郭に建つ元妓楼の料亭百番 ※本文とは無関係です)


冷害による娘の身売りといった時代はとうの昔に過ぎ去り、現代は過去のどの時代と比べても社会福祉が厚い時代です。もちろん、現代にも生い立ちや環境には差はあれど、少なくとも、上記のような「一家が食うに食われずで苦界に堕ちた遊女像」を当て嵌めることはできません。

女性は何を想い、なぜ春を鬻いでいるのでいるのか? この答えを探すことは、私にとって遊郭調査の大きな課題の一つであり、またこの記事を閲覧してくださっている方なら、同様の興味をお持ちのことと思います。

今回、大阪のとある現役遊郭で働いている女性、みいさん(仮名)にインタビューする機会を得ました。


(ホテヘル時代のみいさん:写真提供みいさん)

インタビューをお願いするにあたり、写真を拝見しました。女性に対する男性一般の審美眼を当て嵌めるのであれば「奇麗な女性」です。そのギャル的な外見だけを頼りに疑問を投げかけるとすれば「なぜ水商売でもなく、認可された性風俗でもないの?」との疑問が頭をもたげることでしょう。

しかしそのどちらでもなく彼女は遊郭で働いています

私を含む外野だからこそ持ち得る「なぜ」を彼女にぶつけてみました。

現代遊女、その等身大の姿

—–こんにちは。早速ですが、みいさんのことについて教えてください。
こんにちは。大阪に住んでいる20歳です。今は遊郭での仕事以外にホテヘルとアパレル関係の仕事をしています。高校生の時にもここの遊郭に半年ほど勤めていましたが、つい先日からまたここで働くことにしました。風俗経験はデリヘル1年半、ホテヘル半年です。

彼氏?彼氏もいますよ!(笑)

将来は結婚したいし子供も欲しいんですが不妊症なんですよね〜。結婚するならお客さん以外の優しい年上の自立した男性かな(笑)

—–最も聞きたいことの一つとしては、なぜ遊郭で働くのか?ということなのですが、お金ですか?
美容整形費用を貯めるために働いています。どうせ風俗で働いてお金を貯めるなら、遊郭建築が好きだったので、その中で働きたいなって。今は費用を工面するために働いてますけど、もしお金に困っていない状態だったとしても遊郭で働きたいですね。

現代遊郭のシステム

—–そもそもどうやって遊郭の仕事を見つけるのでしょう? 人の紹介や、飛び込み?
インターネットで検索しました。「求人」のキーワードで検索すればすぐ見つかりますよ。
[pe2-image src=”http://lh6.ggpht.com/-O7-QcAkA8zg/Uxb8bZfeKsI/AAAAAAAAWCU/jxxfPrgv5O0/s144-c-o/%2525E3%252582%2525B9%2525E3%252582%2525AF%2525E3%252583%2525AA%2525E3%252583%2525BC%2525E3%252583%2525B3%2525E3%252582%2525B7%2525E3%252583%2525A7%2525E3%252583%252583%2525E3%252583%252588_030514_072818_PM.jpg” href=”https://picasaweb.google.com/111398820041318431637/qtBsdB?authkey=Gv1sRgCLX337jx-vuU7gE#5987250302265207490″ caption=”” type=”image” alt=”スクリーンショット_030514_072818_PM.jpg” pe2_single_image_size=”w420″ ] (※遊郭部注:大阪の某遊郭名で求人検索したところ、いとも簡単に募集サイトが見つかった)

—–みいさんの働いている遊郭について教えてください
お客さんは旅館に入ります。男性は旅館に好みを伝え、旅館がその内容を汲み取って置屋へオーダーします。そして置屋から旅館へ女性が派遣されます。

特定の契約関係のようなものがあって、置屋は特定の旅館にしか派遣しません。旅館の中に置屋があるところもあります。

旅館は女の子の特徴をメモしていて、そのメモを頼りに客のオーダーと摺り合わせて、置屋へオーダーします。ただ、メモには「名前、年齢、タトゥーの有無、バストカップ数、風俗経験の有無」くらいしか書いていないので、結構適当にオーダーしてると思います。

女性と旅館と置屋の取り分は大体4:3:2です。お客さんから1回7500円を受け取った場合、私の取り分は3500円ですね。

(※図作成:遊郭部)

私は週6出勤することもあります。1日に相手するのは8人くらい。かなりしんどいですが何とかなりますね。他の子はだいたい週4くらいかな。
(※遊郭部注:仮に週6日出勤し8人相手にした場合、1か月で約70万弱の手取りになる。雑費等の有無は不明)

—–置屋から旅館へ出張するときの持ち物は?
避妊具(S・M・Lサイズ)、イソジン、モンダミン、エタノールを染み込ませた赤ちゃんのおしりふき、ローション、ゴミ袋、旅館から預かるお金を入れるポーチです。

ゴミ袋は派遣された旅館にゴミを残さないよう礼儀的な配慮です。

お金を入れるポーチには鈴が付いていて、お客さんが触るとバレるようになっています。

女の子にもよりますが、自分の好きなボディソープや炎症鎮痛用の軟膏、化粧ポーチも入れたりします。

—–性病対策はしているのでしょうか?
避妊具と、持ち物のイソジンやエタノールを染み込ませた赤ちゃんのおしりふきを使うだけです。それ以外はしていないです。

中の人たち

—–置屋について教えてください
最初に軽いレクチャーがありますが、旅館での行為後の片付けの説明くらいです。あとは普段のセックスをしてください~みたいな。最初に旅館へ挨拶回りもします。名前と顔を覚えて貰わないと、旅館からオーダーして貰えないので。

休んでも罰金は無いですが、長期間休むと顔を忘れられて、結局、自分が不利になります。

置屋の人は女性です。優しいですよ。古い置屋は女性が多いですが、最近は若い男性も増えてきました。

女の子同士は仲良しで、一緒にご飯作ったりもします。友達もできますよ。ただ入れ替わりはものすご~~~く激しいのでいつの間にか居なくなる子もいます。

女の子の全員の人数は分かりませんが、私のいる置屋は常時4人くらい詰めてます。最近は若い人が増えた印象です。23歳から40歳くらいかな。

—–売れる子と売れない子って、明確に別れるのでしょうか?
完全に別れますね。旅館から気に入られたら売れます。愛想が良くてキャピキャピした子ですね。これまで勤めたことのあるデリヘルやホテヘルでは細身の子が売れていたのですが、遊郭ではややぽっちゃりの子が売れてる印象があります。

最後に

—–最近では遊郭について興味を持つ女性が増えたように感じています。もし女性がみいさんの働く遊郭へ見学に来たらどう思いますか?
私は全然構いません。馬鹿にされたら腹が立ちますけどね(笑)

—–なぜ遊郭で働くことが好きなんですか?
15分しか一緒に居れない、恐らくもう二度と会えないっていう一期一会の切なさが好きです。ホテヘルやデリヘルだとネットで顔写真を見て、スケジュール確認して予約もできるけど、遊郭はそれができないし、ほんの短い時間しか一緒に居れない寂しさも好きです。

帰り際、たいがいのお客さんは何も言わないのですが、たまに「またね」と言われるとグッときます(笑)。嫌なお客さんでも短い時間なら我慢できるし、どんなお客さんでも旅館から送り出すときはいつも淋しいですね。

—–ありがとうございました。

インタビューを終えて

彼女には世の中へ斜に構えた様子はなく、衒いなく明るく淡々と答えてくれました。遊郭で働く主な理由が借金といった金銭問題ではなく、遊郭への興味を動機としていたことが、その明るさの一端かもしれません。その明るさを享楽的で刹那的と捉える向きもあるかもしれません。ただし、もし彼女が享楽的・刹那的だとするならば、昔の遊女・娼妓も同様にそういった性格を持っていたはずです。そして男も。社会も。

同時に以下のようにも感じました。

過去と現代を比較して、「昔の遊女・娼妓は家族を助けるための哀しい女性だった」「今の子は金欲しさに容易く身体を売り物にする」との枠の中で語るのが正しいのだろうか?—-あるいはそうかもしれません。ただし過去であろうと現代であろうと、突き詰めれば、「選択肢の幅」はその主体が体感する「広さ」が絶対であって、外野が感じる広さと、そこで生きる女性が感じる広さには、大きな隔たりがあるのではないだろうか…と。

補足コラム

今回のインタビューを読む前に(読み始めた直後)、次のように訝しんだ方も多いかもしれません。「そもそも現代でも売春が看過されているのはなぜ? アングラな現役遊郭は別として、なぜ警察はソープランドを許しているの?」

各人思うところがあるでしょうが、結論から言えば、「消滅しない」のではなく、「現在の法律を前提としているからこそ存在している」という認識が正しいように思えます。

消滅・撲滅できない理由を「人間の性(さが)」や「無くすことによる地下化」という人間論や社会悪といった、ともすれば議論が平行線を辿る論点に置き換える必要も無く、現法律こそが存在を許す規定に仕上がっているからです。売春を防止・禁止するルールである「売春防止法」がその立法過程で力点としたのは、売春を生業とする女性の保護・更生でした。結果、「個人売春」に対しては罰則規定ありません。そのことが消滅しないと私が推測する最大の理由です。(※個人にも罰則を科せられることがあるが、それは公衆・公共の場所での売春行為などに限られる)

「個人売春」について、ごくごく大雑把に説明するならば、自分の意志で個人的に売春を行う行為のことです。対して、人を管理し売春に従事させる行為、つまり「管理売春」には厳格な警察の取り締まりと厳罰が科されます。売春防止法は他人を売春に従事させないことを最大の目的とした法律なのです。

現役遊郭は言うに及ばす、全国各地のソープランドでも実質的な売春が行われているにも関わらず、現に存在し続けているのは、それらが「個人売春」という名目の下に成り立っているからです。

つまり、業者は場所貸し(あるいは個室でのサービス業務に対する労使関係・業務委託)しているに過ぎず、女性と客とが買売春行為に及ぼうとも、それは女性の「個人売春」である、というロジックです。また、ソープランドといった明確な性風俗業でなくとも、例えば誰かと誰かが瞬間的に恋に落ちて性行為の上に金銭の授受関係が生じたとしても、警察はおろか他の制度や法律で縛ることは困難です。警察としてはそもそも罰則規定がない法律を根拠に動くことはできませんし、個人の自由が保障された現代において、個室という私的な空間に警察力を介入するには相当のハードルを要します。

「ソープランドで働く全ての女性は、自分の意志で個人売春を行っている」というウルトラC級の前提を作るために業者側が採る策として、(形式的だけでも)避妊具は女性が自分で用意し、業者側は店に女性を宿泊させないこと等が挙げられます。避妊具を業者が女性へ支給すれば、「女性を売春に従事させている」と見なされるからです。あるいは宿泊させることも「管理」と見なされます。(事実、売春防止法違反の事案として、女性を店に宿泊させたことが触法にあたるとされて検挙されることが多い)

この避妊具や宿泊といった業者側の運用状態を「管理売春と見なすかどうか」というボーダーラインは、明文化された法律に基づいてはいません。売春防止法の条文どこを探しても「避妊具は店が支給せぬこと」などとは一文も書かれていません。ボーダーラインは取締りの現場側である警察の判断と取締方針に依存しているのです。

(以下は筆者の考察を多分に含む)

ボーダーラインが警察の裁量に委ねられた範囲に存在する以上、当然、業者は警察と仲良く付き合いたがり、業者と警察との間に癒着の可能性が高まります。癒着は警察にとっての不祥事ですので、警察は業者だけではなく、警察職員自体をコントロールする必要性が生じます。警察首脳としては、業者と自身の組織という相対する2極のコントロールを迫られるのですから只事ではありません。まさに双頭の蛇を操るような曲芸が求められる事態です。

その曲芸の現実的な落しどころは、癒着を個人スケールではなく、より大きな制度・組織のスケールに昇華させることであり、そうすることで癒着は「癒着」ではなく「指導」と変化します。登場するのは防犯協会という存在です。警察は防犯協会を通じて、業者と意思を疎通し、その現場に適用するパワーをコントロールします。

警察の天下り先と揶揄されることも多い防犯協会ですが、警察からすれば、防犯協会という組織と制度を用いて、警察側の「全体利益」に還元することで、個人や部署という割合小さな「個人的利益の追及による癒着」を抑止でき、さらには警察の意思を他者を通じて伝えるにはOBは最良の存在となります。また業者から見ても警察の意思を汲み取り、現場の運用ルールの調整を計るには、やはりOBが最長の存在と言えるのです。先のウルトラC技は業者側が一方的に作り上げた「言い逃れ策」ではなく、警察の判断と取締方針を汲み取った上での「運用ルール」と言えます。

筆者はとある中部地域の楼主(既に廃業しているが、売防法後も遊郭をしばらく続けていた)から聞いたことがあります。「昔、防犯協会に賛助金を支払わなかったら、他の妓楼経営者は無事で、自分だけが検挙された」と。元楼主の思い過ごしなのか、賛助金絡みなのか真偽は不明ですが、遊郭側が防犯協会を強く意識しているのは間違いないようです。

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