全国遊覧社『全国遊廓案内』(昭和5年)復刻のお知らせ


 『全国女性街ガイド』復刻に続き、『全国遊廓案内』を復刻しました。(発行:カストリ出版

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敗戦を境に揺れ動いた色街

 『全国女性街ガイド』は敗戦から10年目を数えた昭和30年(1955年)の日本に存在した売春街のルポですが、今回復刻に至った『全国遊廓案内』は、戦前昭和5年(1930年)の記録です。
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 両作品は、全国至る所に存在した数多の色街を扱いながらも、四半世紀という時間を隔てて発行されているわけですが、ある意味、対のような存在です。両著を相対させることによって、「戦前」と「戦後」における色街の状況が、ちょうど両側からライトを当てられたように明るく浮かび上がってくるからです。

 日本の色街は第二次世界大戦を境に、激動に激動を重ねました。それまで法制度で厳然と確立されていた公娼制度が戦後に解体され、娼妓という職業や妓楼(貸座敷)も消滅しました。変わって産声を上げたのが「赤線」です。公娼から黙認政策、そして禁止へと、戦後一気に180度舵が切られたわけです。

最もドラマチックな時代

 制度といったシステムだけではなく、審美的な面でも色街は様変わりしました。国土の多くは焦土と化したため、(都市に遊郭の需要が生まれ、その都市は戦略上重要なため空襲対象となって当然なのですが)都市と共に多くの遊郭は灰燼と帰しました。そして新たに産声を上げたのが、いわゆるカフェー建築です。蝋燭やガス灯の火で妖しく照らされたベンガラ格子の時代から、鮮やかな発色の豆タイルを纏い五彩またたくネオン光を浴びたカフェー建築。これも戦前⇔戦後の大きな変化です。

装丁も再現

 『全国遊廓案内』は、以前、拙記事でもご紹介したとおり、近代デジタルライブラリーでも閲覧することができます。その点、『全国女性街ガイド』のような希少性は薄いのですが、今回、改めて復刻したい欲求に駆られました。
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 近代デジタルライブラリーで閲覧すると判るかと思いますが、なにせ操作性が悪く見づらいことがとてもストレスでした。一部分ならともかく(といっても目次も不便なのでそれさえ困難ですが)、長文を読むのはとても辛いものがあり、なにより集中を欠きます。

 実物をご覧になった方ならご存じかと思いますが、原著の装丁はカバーデザインを始め、とても心惹かれる仕上がりです。丸窓から覗く娼妓のイラストレーション、艶っぽいピンク色の表紙。古本で出回っている原著の多くは褪色しているのですが、カバー裏など光が当たらなかった箇所を見る限り、発行当初はとても鮮やかなピンク色だったようです。当時、これほどドギツイ色が使われていたことに素直に驚きました。

 この本が当時の本屋さんの棚に並んでおり、当時の好事家がこっそり書店の本棚から引き出していたのかと思うと、自分でも同じように冊子の状態で掌に載せてみたくて仕方がありませんでした。

愛らしいコンパクトサイズ

 判型は原著に近づけて新書サイズで組みました。横11センチ、縦18センチと原著のように小ぶりな愛らしいサイズです。大きめのポケットや鞄のスキマに入る大きさなので、遊郭探求の旅の共(友)に持ち歩いて貰えれば嬉しいです。
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戦前と戦後 両極から光をあてる

 そして、一番強調したいことは、対の存在である先に復刻した『全国女性街ガイド』と一緒に眺めてみる愉しさです。戦前存在した遊郭(貸座敷免許地)は、戦後の焼け野原から復興した後どのような街になったのか…? 脂粉の匂いは跡形もなく消え失せて住宅地となった街もあれば、復興後も色街としての遺伝子は残り続け、戦後なおも赤線としての系譜を辿った街もあります。是非、2著を並べてご覧になって下さい。

付録記事を収録 発禁本の真偽を確かめる

 折角復刻するからには、純粋な復刻としての価値だけではなく、これまで大きな謎だった事案にも挑んでみました。『全国遊廓案内』の「発禁本」としての真偽です。
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 これまで『全国遊廓案内』は「発禁本」として、ともすると扇情的な響きをもって紹介され続けてきました。確かに扱っている内容が、現代となっては異質なものですから、その謳い文句が踊っていても不思議はありません。

 ただ、私としてはその謳い文句だけが独り歩きしているように思え、また同時に、この界隈ではあまりに有名すぎた故に、その真偽については誰も疑わずにいた状況があったのかもしれないとさえ思えてきました。多くの著書で「発禁本」として紹介されてものの、その経緯や詳細について触れているものは一冊として存在しないのです。この状況が発行から実に80年間も続いてきました

 復刻する機会に「発禁本」問題を改めて再点検すべきと感じました。完全に手探り状態ながらも少しずつ調べていくと、今まで全く知られていなかった状況が止め処なく明らかになり、気がついたら調査に2ヵ月を費やしていました
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 今回のレポートは約1万字と少し長文ですが、満足のいく調査ができたと思っています。何より調査の過程で多くの方に助けや示唆を頂いたお陰です。この調査記、楽しんで頂きたいと思います。また、楽しんで頂けるものになったと自負しています。
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巻末解説 小松和彦氏

 秋田県の郷土史研究家、小松和彦氏による解説。戦前戦後の色街ガイドブック、『全国遊廓案内』と『全国女性街ガイド』の二著を用い、秋田県下における色街の変遷史を辿ったものです。秋田県がモデルケースとして用いられていますが、こと遊廓に関しては全国的に見られた傾向を分析しており、秋田県外の方にも大変興味深い無いようかと思います。時間と足を使った内容に感服しました。

というわけで『全国遊廓案内』復刻のお知らせでした。

書誌情報

・題号:『全国遊廓案内 ≪復刻版≫』
・原著編:全国遊覧社
・復刻編:渡辺豪
・発行:カストリ出版
・仕様:新書(110 × 180 mm) / 320ページ / 並製

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