『夜の盛り場探訪』(昭和26年)復刻のお知らせ


昭和20年代の全国の盛り場をルポタージュした作品、「夜の盛り場探訪」を復刻しました。

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書誌情報
・復刻解説:比嘉 健二
・復刻編集:渡辺 豪
・復刻発行:カストリ出版
・仕様:A5判変形 / 64ページ / 中綴じ

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カストリ雑誌の末っ子『夫婦生活』

『夫婦生活』は敗戦から数えて4年目の昭和24年に刊行された〝夫婦雑誌〟です。夫婦雑誌とはその名の通り、読み手を夫婦に対象とした雑誌を指しますが、内容はもっぱら性技巧や避妊方法など、性愛のハウツー本であり、結局のところ〝ハウツー・セックス〟以外の何ものでもありません。とはいえ、戦後の焼け跡の中から少しずつ復興の兆しが見え始め、新しい価値観、男女の勤め人の増加、マイホーム志向と進む中で、夫婦の性愛が追求されることは必然で、ハウツー・セックスは時代が要求したことでもありました。

僅かに時代を遡って、同じく性をテーマにした雑誌ジャンルといえば、いわゆる〝カストリ雑誌〟があります。その一般的な定義を前提とすると、カストリ雑誌の発行されていた期間が昭和21〜25年ですから、『夫婦生活』はその末期に刊行されたことになります。

当著は純粋なカストリ雑誌とは云えませんが、カストリ雑誌時代が終わる間際に生まれたカストリ雑誌の末っ子と云えるかもしれません。

エロ本に集った一流の執筆陣

カストリ時代の猟奇・エロとは一線を画し、当著では各界の識者が筆を取り、大まじめにエロを語りました。執筆者の一例を挙げれば…

大宅壮一(社会評論家)
雪吹周(赤線時代の吉原病院長)
式場隆三郎(精神科医・山下清を見出した人物)
幣原喜重郎(衆院議長)
二代目・市川猿之助(歌舞伎役者)
金森徳次郎(国会図書館長)
北林透馬(流行作家)
徳川夢声(弁士・マルチタレント)
小松崎茂(画家)
富永一朗(漫画家)

これまでのカストリ雑誌に見られる、ただただ扇情一方の内容に飽き始めていた大衆の要求をいち早く読み、より充実した内容で〝性〟を世に問おうとした編集者の心意気が垣間見えます。およそ60年後の今、これだけ各界に渡り、また同時に一流の執筆陣を揃えている雑誌は思いつかず、まして当時のエロ本の類いにこれだけの人材を揃えていたわけです。

ただし、元も子もないことを言えば、これまでのカストリ雑誌が警察から刑法175条(わいせつ物陳列罪)を理由として眼を付けられており、「セックス」を「健康的な夫婦の性愛生活」という文脈に置き換えることで、そういった官憲の目をかわす狙いもありました。

刊行の裏事情はともあれ、大衆は〝カストリ雑誌の末っ子〟を歓迎し、その結果は、発行から僅か約半年で達した35万部という数字に如実に表れています。

内容は、飽くまでハウツー・セックスを軸としながらも、文芸、グラビア、漫画など多岐に渡りました。また、前史ともいえるカストリ雑誌の影響を引きずってか、猟奇モノ・色街探訪といった記事も含まれていました。

今回復刻したのはそのカストリの残滓ともいえる色街探訪モノで、昭和26年から翌27年に10回に渡って連載された「夜の盛り場探訪」シリーズです。

爛れた街を45000字で綴る

内容はその題号の通り、各都市の盛り場ルポタージュ。地域は東京をメインに、大阪、京都、神戸、名古屋といった大都市圏にまで及びます。

収録記事は以下。

「酒と女が渦を巻く 新橋・銀座ヘソ下地図
「女体マーケット ノガミ・エンコの売春横丁
「肉体暴風 ジュクとブクロは温泉マークの海」
女体の投売り 渋谷・五反田・品川の人肉地帯を行く」
「東洋一の売春街 夜の都 女体の海 玉の井・鳩の街 股下のぞき
「大東京の青春パチンコ島 東京パレス・亀戸・州崎は遊蕩楽天地
「これは仰天!百鬼夜行 女体乱舞の大阪のカスバ 梅田八百坪を照明する」
「白蛇の女体 うごめく東洋のマルセーユ神戸 ピンクの人肉デパートの街 京都」
「パチンコの都 名古屋名物 東洋一の中村遊廓 二十四時間」
「人肉國際マーケット 本牧チャブ屋のベッドルームを覗く」

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今回の誌面は淡いピンクです
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凄まじきは上野のジキパン(=乞食のパンパン)
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東洋一の売春街…
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中村遊廓の四海波内部も

10回連載を一挙復刻、45000字を超えるボリュームとなりました。

玉の井、鳩の街、東京パレス、亀戸、洲崎、本牧、中村(名古屋)、福原(神戸)といった赤線地区のみならず、戦後は街娼の濫觴で歓楽街そのものがいわば売春地帯の体をなしていた一面から、赤線地区に限らない盛り場の爛れた様相も興味尽きないものがあります。(蛇足ですがチャブ屋のルポはかなり珍しいです!

一流の執筆者を揃えていた反面、無名のライターやゴーストライターとおぼしき人物による筆の原稿も多く掲載されており、読み物として軸足を置いて執筆・編集された跡が見えます。

巻末解説は稀代の編集者 比嘉健二氏

当著の巻末解説には、比嘉健二氏に寄稿頂きました。比嘉さんはかつてミリオン出版において伝説の雑誌ともいえる、暴走族雑誌『ティーンズロード』を始め、実話暴露系雑誌『GON!』『実話ナックルズ』などを立ち上げ、初代編集長を務めたサブカルチャー雑誌界における名編集者です。

ご本人も解説でも語っておられますが、ミリオン出版社で昭和50年以降、エロ本の編集にも携わっていた比嘉さんにとっては、『夫婦時代』はエロ本の先駆でした。また比嘉さん自身は、ビニ本を頂点として昭和50年代に〝紙の上のエロ〟が終局した当時から叩き上げてきた編集者です。

エロの始まりとしての『夫婦生活』へ、エロの終わりを知る比嘉さんに寄稿頂きました。

個人的なことを云えば、私自身、20年程前に『GON!』を愛読していました。例えばいわゆる「ゴミ屋敷」を一つ取ってみても、このテーマを初めて取り上げたのは私の知る限り『GON!』の誌面だったかと思います。その約10〜15年後にテレビのバラエティ番組が追いつき、そして現在やっとゴミ屋敷が防災上の問題として行政が動き出したことを報道メディアが取り上げるまでになりました。世の中に先んじること20年…、比嘉さんの圧倒的な嗅覚力。

今回こういった形で比嘉さんから玉稿を頂戴することができ、不思議な感じがしています。この場を借りて御礼申し上げます。

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